嗚呼、あいすまんじゅう

嗚呼、あいすまんじゅう

アイスと言えば牧場のゆるふわソフトクリームと決めていた僕もいよいよ40歳が見えてきた。

夏の暑さが薄まり、秋の入り口を肌が感じる頃合いになると、僕は少しアダルトな気分になってくる。

小豆あんをバニラアイスで包んだあのロングセラー商品。

北海道小豆を使った、とろける食感に仕上げた風味豊かな、丸永製菓の「あいすまんじゅう」が食べたくなるのだ。

40代は秋の季節。大いなる収穫祭だ。

その入り口が見えてきた時に、相応しい嗜みを学ばねばならない。

40代の門の入り口に掲げられている言葉を知らない者はいないだろう。

「汝あいすまんじゅうを食すべし」

イロモノアイスと思いきや、とんでもない。

あいすまじゅうは、アイスの中でも一際輝きを放つ一等星。

コーティングされているアイスは、絶妙の柔らかさ。

そう、まんじゅうの皮を彷彿とさせる。

あの優しい歯触り。

氷菓ガリガリにやられた知覚過敏の歯たちは大いなる慰めを感じるだろう。

あずきあんは北海道産が黒真珠よろしく、中にぎっしり詰まってる。

ちなみにこし餡派の私も、このあいすまんじゅうを食べてから腰砕けになってしまった。

こし餡派の同志諸君には本当に申し訳ないことをしたと思っている。

棒からそのまま食すのがスタンダードだが、芸術の秋には、やはり最近流行のあいすまんじゅうのトラーンシュがおすすめだと思う。

純白の白と紫がかったあずきのコントラストの輝きをぢっと眺めていると、出がらし人生の後半戦を生きる勇気を貰えるのだ。

神は細部に宿ると聞いた時、嗚呼あいすまんじゅうのことだなと私は思う。