私は現代の星の王子様の取り扱いが好きではありません。
美しい作品タイトルだけが先行して身勝手でセンチメンタルで内向的で薄められた鶏ガラスープのような星の王子様の取り扱いに憤慨しています。
星の王子様に出てくるキャラクターたちはどれもすごく個性的。
でも、その個性豊かなキャラクターの骨組みは、今回紹介する人間の大地の中にあります。
すっかり安っぽいキャラクターになってしまった星の王子様を救うには、私たちは人間の大地を読まねばなりません。
人間の大地を読めば、星の王子様を読むのに適しているのは優しい光に包まれた寝室ではなくて、シガーバーで葉巻の紫煙をくゆらせながらウィスキーを飲むのが最適だという結論に行き着くはずです。
ページをめくるほどに、力強く気高い魂の持ち主がそこに悠然と立っている姿を私たちは見るでしょう。
私たちの多くは、未だ空を飛ぶことを知りません。
今は旅客機でどこでも飛んで行けるじゃないかという声もあるでしょうが、小さな角丸の窓から見える雲海を見て、僕は飛んでるんだ!と感じるでしょうか。
当時の飛行士は文字通り空を飛んでいました。
鉄の覆いがない飛行機で操縦桿を握りながら、滑空する感覚はやはり特別なものでしょう。
飛行士としてのサン=テグジュペリの経験が無ければ星の王子様は生まれなかったはず。
自由に空を舞い翼を折られてリビアの砂漠に落ちた飛行士でなければ書けないエッセイ。
それが人間の大地。飛ぶという行為は今でも、やはり崇高なものだと思う。
醸し出す雰囲気だけで語られるもの、眼差しで語られるもの、言葉を使うことのない上品な演出が世の中には沢山ある。
ぼかしておけば、多くの人はそこに勝手気ままな夢を見る。
けれども、サン=テグジュペリは、そういった綺羅星をしっかりつかまえて言葉として紡いでいく。
それが人間の大地であって、そこから生まれたのが星の王子様に違いない。
雰囲気として存在していた人間の尊厳を星として結晶化することに成功した稀有な作家。
思いつくままに書き殴ってしまいました。それくらい興奮しているんです。人間の大地、もう一回読みますよ!
最後に私が一番好きなサン=テグジュペリの言葉を引用させていただきます。
たとえ、どんなにそれが小さかろうと、ぼくらが、自分たちの役割を認識したとき、はじめてぼくらは、幸福になりうる、そのときはじめて、ぼくらは平和に生き、平和に死ぬことができる、なぜかというに、生命に意味を与えるものは、また死にも意味を与えるはずだから
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