私は高校時代にブラスバンドというなかなか特異な世界に所属していました。楽器はフルート。
多感な時期にこういった部活に身を置くと、会社員になった今でもその影響が効いているんじゃないかと思うことがあります。会社という組織の場合、受け入れられるものと受け入れられない事柄の「分別」をつけていかないと生き残ってはいけません。
組織の中で活きる「分別」というのが、ブラスバンドという共同体の中にぎっしりと詰まっていたのかもしれません。
- 其の一:ピアノ経験者と楽器未経験者とでは、象とアリくらいの力量差が出る。そして、その差はごく一部の例外を除き埋まらない。
教訓:努力は必ず報われるとは限らない。努力は主観に属し、結果は客観に属する - 其の二:譜面が読めない人間にとって音符やリズムは外国語である
教訓:未知のものを学び直すという心意気を学ぶ - 其の三:フルート、クラリネット、トランペットなどメロディーを奏でるパートは、ソロパート争奪戦になるため、人間関係がギクシャクする。
教訓:主人公の席には限りがある - 其の四:自前の楽器を持つには家がそこそこ裕福でなければならない。そして学校の楽器は大抵ポンコツである。
教訓:親の経済力がモノを言う - 其の五:目立つパートほどみんなの前で吊るし上げに遭う
教訓:3年間耐えれば、鋼のハートが鋳造される - 其の六:誰かが吊るし上げられているときは、拾遺では譜面を見たり、楽器を磨き無関心を装う
教訓:誰も面倒には巻き込まれたくない - 其の七:希望した楽器になれる確率は低いが、いつしかあてがわれた楽器に強烈な愛着をもつようになる
教訓:人間は順応出来る生き物だと知る - 其の八:部内恋愛は必ず拡散され、小さな社会単位で愛憎劇が展開される
教訓:人間は基本的にゴシップネタが大好きである - 其の九:上下関係による絶対的な恐怖支配は卒業後、直ちにその効力を失う
教訓:恐怖支配は属する共同体の内部のみで承認されると同時に、永続しない人間関係である - 其の十:それでも全員で一つの曲を奏でるということは気持ちいいこと
教訓:細事はさておき、一つの仕事に向かっていく重要なプロセスを学ぶ
【番外編】大人になると音楽は長く続けられる趣味であることに気づく
譜面が読める、楽器が演奏出来るということは、とても価値があることだったのだと大人になって知ります。
そして、もう一度楽器を演奏しようと思った時、「楽器、練習室を確保する経済力」「練習時間を確保するワークライフバランス感覚」の二つを満たせるかが、そのまま会社員としての有能さと結びつくとも言えそうです。