30年数年も生きていると、「効率化」が身に染み付いてきます。
朝、スーツを着る順番はこう決まってくるはずです。
パンツと肌着と靴下を先に着用します。
その姿はこの世のものとは思えないほどみっともないけれど、スーツを着用するにはこの手順が一番効率的。
また、空いている各停の電車よりも、混んだ急行列車に乗って目的地へ早くつこうとします。
駆け込み乗車や点滅している青信号の横断歩道を駆け足でわたる。
課金をすれば効率的にゲームを進めることが出来るスマホゲーム。
お金と効率化は分かち難く結びついています。
とあるテレビ番組のアンケートでは、日本人が欲しいものは1位が「時間」、2位が「お金」です。
このランキングの並びは正直不気味ですね。
誰もが時間を無駄にしたくないという思いに囚われています。
処理速度の速さが幸福化への速度だと世間では喧伝されています。
速いことはいいこと。
だから、効率化されて手にした時間をさらなる効率に注ぎ込む。
投資会社そのもの。
俗人だろうが捨てるだけのミニマリストだろうが、このあたりに違いはありません。
効率化に預ける自分の人生。
効率化限界の時代に突入
当たり前のことですが、人生には限りがあります。
効率化は若さを食い物にする。
若くないと新しいものについて行けなくなるから。
加齢と共に、脳の処理速度は鈍化する。
これは事実。
となると、一人の人間に委ねられる「効率化の限界値」は自ずと決まってくる。
人はたちまちのうちに死んでいくのだから。
君の人生はこれ以上効率化出来ないところまで来てしまった。
というより、効率が人類を見限りつつあるという言い方が正確かもしれない。
人工知能が自律的に効率化を推進する時代になりつつある。
人間が育てたはずの効率という存在が人の手を離れて、独り立ちをする。
人が生み出した考えもまた、命を持っていると私は思っています。
効率化という考え方は、年老いた老人みたい。
効率化で若い時間をたっぷり吸い取ってすっかり若返ったので、いよいよ人の生活から出ていくのです。
効率化があなたの生活から出て行った後に、あなたの人生に何が残るでしょうか。
何も残らないのです。
過剰な便利さで浮いた時間は、恐ろしいほど軽薄なものなのです。
こんな考えに共感してくれる人はいあまりいないでしょうが、実際そうなのです。
このことは時代が進めば進むほどいよいよはっきりしてくるでしょう。
世界一貧しい大統領 ホセ・ムヒカ
今回は、2012年国連会議でのスピーチをきっかけに、「世界一貧しい大統領」として世界中から注目されたホセ・ムヒカ元大統領の考え方を取り上げてみようと思います。
ホセ・アルベルト・ムヒカ・コルダノ(愛称ペペ)
1935年5月20日生まれ。ウルグアイ東方共和国出身。第40代ウルグアイ大統領(2010年〜2015年)。趣味は園芸・読書。2012年、ブラジルで行われた国連会議でのスピーチが世界中から注目。政治家は庶民感覚を失うべきではないといった信念から、大統領在任中は公邸に住まず、小さな古い家屋に住む、旧型のビートルに乗り、飛行機に乗るときはエコノミークラスか他国の大統領専用機に相乗り、その余ったお金を学校設立資金として提供。給与の90%を慈善事業と政党に寄付し、月10万円ほどで生活。中道左派。ストア哲学が信念の源であると公言。
ウルグアイ
正式名称はウルグアイ東方共和国。南アメリカ大陸の東海岸に位置する小国。首都はモンテビデオ。ウルグアイはチリに続いてラテンアメリカで二番目に生活水準が安定している国。政治や労働の状態においては大陸で最高度の自由を保つ。
この世界一貧しい大統領の人格形成に少なからず影響を与えたのが、日本人たちがいます。100年にウルグアイに入植した日本移民です。当時の日本人の相互扶助の精神や名誉を重んじる姿に感銘を受けたと語っています。
ホセ・ムヒカ大統領はこういいます。
「貧乏な人とは、少ししかモノを持っていない人ではなく、際限なくモノを欲しがりいつまで経っても満足しない人のことだ」
「モノを買うとき、人はカネで買っているように思うだろう。でも違うんだ。そのカネを稼ぐために働いた、人生という時間で買っているんだよ。生きていくには働かないといけない。でも働くだけの人生もいけない。ちゃんと生きることが大切なんだ。たくさん買い物をした引き換えに、人生の残り時間がなくなってしまっては元も子もないだろう。簡素に生きていれば人は自由なんだよ」
「モノであふれることが自由なのではなく、時間であふれることこそ自由である」
関連書籍は3冊読みましたが、一番オススメなのは、佐藤美由紀さんの世界でもっとも貧しい大統領ホセ・ムヒカかな。