自然科学分野の話はやはり面白いですね。
プレゼンターの生態学者スザンヌ・シマードは、カナダの森での30年間に渡る研究で、木々はお互いに会話をしているという仮説を立て検証した結果を語ってくれます。
一見無口な彼らにも独自の言語があり、世界があるのです。生物学の古典ユクスキュル/クリサート著の「生物から見た世界」の考え方と根は同じような気がします。
人間以外の生き物たちがもつ世界観に迫ろうとする彼女の姿勢は、科学や技術の進歩が有用性のみではなく、いのちへの畏敬にも向けられるべきであるということを予感させてくれる素晴らしいプレゼンです。
最初は異なる樹木同士の、共生関係についての話。
彼女の研究によって、シラカバとモミの木の間には相互依存の関係があることが検証されました。
その交流とは、地下から炭素、窒素、リン、水、 アレル化学物質、ホルモンのやり取りするというものです。
時には、栄養素が足りない隣の木へ炭素などの栄養分を余計に送ったりも!
さらに、すべての木々がお喋り好きというわけではありません。
この話の中で、スギだけは他の木と交流していないことがわかったそうです。
面白いですね!
沈黙のスギの生態
スギが他の木々と交流しないと書かれてあり、興味が湧いたので少しスギについて調べてみました。
日本国内でも毎年1600万本植えられているスギ。
花粉症の原因としてすっかり嫌われてしまったスギですが、もともと成長が早く、建築資材としてのニーズが高かったため多く植林された歴史があります。
建築資材として優秀なのは、幹が垂直に伸びる性質が強く、曲がりにくいためです。また、スギをはじめとした針葉樹は樹脂に富んでいます。この樹脂が防御壁となり病虫害に強く、育てやすいと言われる所以です。
現在でも、林野庁では「日本の林業では最も重要な樹種」として位置付けられているとか。
もしかすると、他の木々と相互依存しなくても早く成長出来るからこそ、他の木々とは会話をしない無口な奴ということなのかもしれないですね。
話の後半では、「母なる木」の存在についても触れています。最後まで見れば、森への見方が大きく変わるはず。是非ご覧になってください。
植物たちが独自のネットワークを持っているという考え方は、生態学者の間では今では常識のようです。
興味のある方は、下記の書籍を是非読んでみてください。
Tips
菌糸(きんし)
多くの菌類が形成する糸状の構造であり、それらの菌類の栄養体を構成する単位として機能する。栄養体が菌糸から構成されている菌類を糸状菌と呼び、菌糸からなる菌類の体を菌糸体(mycelium pl. mycelia)という。
たとえばシイタケが樹木の茎から生えているのを見たとき、一般の人は樹皮上に出ているものをシイタケと見るが、これは子実体という繁殖のための構造に過ぎず、その本体はむしろ幹の中に広がる菌糸である。種菌として植え付けられたシイタケは、材木の中に菌糸をのばし、その表面から酵素を出して周囲の材を分解し、それを吸収して成長し、やがて子実体を作ることで表面から見えるようになる。また、子実体そのものも菌糸から構成されている。カビの場合も同様で、たとえば餅の表面に出てくるアオカビは、粉の集まりのように見えるのは胞子の固まりであり、実際にはその下の餅の中に広がっている菌糸が本体なのである。糸状菌においては菌糸が本体であり、菌糸として成長し、菌糸からの分化によって様々な構造が作られ、そこで生殖も行われる。シンチレーション検出器
シンチレータ(scintillator)を用いた放射線測定器を言う。電離性の放射線の入射により蛍光や燐光を発生する物質をシンチレータ(scintillator)という。シンチレータは放射線を受けても微弱な光しか発しないが、それを光電子増倍管など[3]で増幅し大きな電気パルスにすることで放射線を検出することができるようになる。このようにシンチレータの放射線に対する発光性質を利用した放射線検出機器をシンチレーション検出器(scintillation detector)と呼ぶ。
炭素13
天然に存在する炭素の安定同位体で、環境同位体の1つである。地球上の全炭素の約1.1%を占める。6個の陽子と7個の中性子から構成される。
安定同位体
同位体(どういたい、英: isotope;アイソトープ)とは、同一原子番号を持つものの中性子数(質量数 A – 原子番号 Z)が異なる核種の関係を言う。歴史的な事情により核種の概念そのものとして用いられる場合も多い。同位体は、放射能を持つ放射性同位体(radioisotope)とそうではない安定同位体(stable isotope)の二種類に分類される。