母が手塚治虫氏の大ファンで、私も幼少期よりかなりの数の手塚作品を読み込んできました。
多作でも知られる手塚氏ですが、実際に彼の作品を読んでみると、たった一人の漫画家がこれほど多様な作品を生み出せるのかと改めて驚かされます。また、読み返したみたいと思える作品の多さでも手塚作品がダントツ。
さすが漫画の神様。
今回は大人になった今だからこそ味わい深い心を薄暗くさせてくれるビターな作品をご紹介していきます。
売上のために話を薄める漫画家たちに飽き飽きしてしまった、萌え絵やデジタル漫画の似たような絵柄はもう飽き飽きという人には、是非ともお勧めしたいのがこれから紹介する手塚作品たちです。
スクリーントーンをあまり使わない手法なので、デジタル漫画が主流になりつつある現代だと手塚氏の画風はかえって新鮮に映るはずですよ。
10位 ミッドナイト
深夜に乗り込むタクシーは何か不思議な魅力を持っていますよね。ミッドナイトは、深夜だけ営業をするモグリのタクシードライバーの話。深夜に起こる不思議な話の数々。人の闇が忍び込んでくる大人向けのビターな作品。ゾクッとした寒気を感じる1話完結型の作品。私は死刑囚の話が好きです。ブラックジャックも友情出演しますよ。
9位 火の鳥
手塚作品の中でももっとも有名な作品の一つ。どうして、これほど有名な作品が第9位なのかというと世代問わず幅広く読まれているSF作品という点で第10位とさせていただきました。ただ、内容はなかなかビターなものが多く、大人になってから改めて読んでみると、胸にくるものがあります。人の罪深き欲望を浮き彫りにする不死鳥の生き血!壮大な宇宙ロマンと歴史が交錯する手塚漫画のひとつの頂点でしょうね。
8位 グリンゴ(未完)
元力士志望という大手商社のモーレツサラリーマンの話。主人公の設定から切り口が独特です。舞台は南米。少し前に話題になったあの「レアメタル」の話が出てきます。インターネットが未発達の時代にこれほどの情報収集能力があったとは。。。凄まじいものがありますね。組織の不条理さ、人種差別、外見コンプレックスなど、手塚先生の描く人間の泥臭さが強烈に臭ってくる作品。
7位 ルードウィヒ・B(未完)
ドイツの楽聖ベートーヴェンを主人公にした作品。個人的には一番好きな話ですが、未完のため7位。手塚氏本人もピアノの名手だったとか。私の一番好きなクラシックは交響曲第九番 第四楽章 合唱です。この曲を作詞したシラーも大好きな詩人の一人。不思議と白パンが食べたくなる作品です。
6位 どろろ
魔神に身体の四十八か所をうばわれ、芋虫のような異形の姿の主人公百鬼丸。この魔神たちを倒していくことで、奪われた身体を取り戻していくストーリー。妖怪どもをバッタバッタと倒していく勧善懲悪と思いきや、人の闇を浮き彫りにする引き立て役として妖怪を用いているスタイルが秀逸。親戚の子供達も大好き!などろろ。妖怪人間ベムを彷彿とさせる薄暗い世界観。盲目の琵琶法師がいい味だしてます。
5位 奇子
第二次世界大戦終戦後。天外家生まれたに奇子(あやこ)という少女が主人公。しかし、奇子の出生の秘密とは。。。蔵に幽閉され歪んだ環境で育った奇子は、好意(友情も含める)を抱いた男性と情交するものだという考えを抱くようになり、実の兄と関係を持ってしまいます。金、女、暴力の全てが揃っています。読後はトラウマ必至でしょうね。
4位 きりひと讃歌
ブラックジャックよりもより一層の悲壮感を伴うシリアスな医療漫画。主人公である医師がモンモウ病という犬のような風貌になる奇病を研究していくうちに自らも患ってしまい。。。医学界の闇、狂気じみた男女関係、手塚作品の中でも人間てんぷらなどの過激な描写や後味が悪いとの評価が下されがちですが、最後まで読んでみれば現実世界の裏側で蠢くものを看取する漫画の神様の凄みを見せつけられるでしょう。
3位 シュマリ
明治の初めの北海道を、アイヌ差別や未開拓地の開墾していく厳しさなどを交えながら一人の男の目から描ききる超大作。波乱万丈、泥臭さ満載の明治の群像劇。登場人物たちは、とにかく「強欲」。自分の欲望を達成するためなら人を殺しても構わないといった畜生のような人間がごろごろ出てきます。シュマリというのは、アイヌ語で「狐」を指します。貴重なアイヌの文化も学べます。
2位 MW
最近Web広告には、残酷な漫画の描写が目立ちますが、MWはその比ではありません。メガトン級の暗黒大人漫画です。テーマは「同性愛」と「猟奇殺人」。主人公は梨園に生まれたエリート銀行マン・結城美知夫、そして、神父・賀来巌。タブーと思われるものをことごとく破っていく。暴力的な描写や残酷な殺人描写がある為、映倫によりPG12指定を受けた作品。残酷な描写の漫画はたくさんありますが、一番醜いのは畜生にも似た人間のその心なのです。それを見事にえぐりだした作品。まぁ、読まないほうがいいでしょうね。
1位 ブッダ
これを読まずして何を読むべきか。手塚治虫が描く釈尊の生涯。14巻から成る大作。映画化されて話題にもなったので知っている方も多いはず。面白いのは、1巻に釈尊は登場せず、まずはバラモン教を中心としたその時代背景から語り始めるという徹底ぶり。全く救いを感じない序盤の展開は心を暗くさせます。私が仏教に興味を持ち始めたのもこの作品がきっかけ。冒頭のウサギのシーンから相当な衝撃を受けるでしょう。必読本。
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