1945年に発表されたジョージ・オーウェルの小説。刊行されてから、半世紀以上経った今でも色あせない名作です。
ソ連におけるスターリン体制への痛烈な社会風刺を寓話的に書いた作品。
あらすじ3行
農場で暮らす動物たちが人間に反乱!
革命達成。動物たちだけの農場をつくる
動物たちの中で支配階級が生まれ。。。
読後の感想
社会主義の名を冠した独裁体制を築くためのやり口を寓話形式でわかりやすく語ってくれます。
これからを担う高校くらいの年代に読んでもらえるといいですね!
本作が現代でも読み継がれる理由としては、単純に社会主義国家の恐怖という視点から脱却して、支配者層による「搾取」というのが、どのように忍び込んでくるかということがよく描けているからだと私は考えています。
作中には被支配者層であるアタマの弱い動物たちが、どのように騙され、支配者層であるブタたちに言いくるめられるかがよく描けています。
社会風刺寓話の原型がここにあります。現代の日本人には猛烈に突き刺さる作品とも言えそうです。
千と千尋が好きなジブリファンには、この動物農場の作中の後半にあるシーンが鮮烈に心に響くはずです。
偏向報道もネット世論も衆愚ゆえ
最近はネットを中心にメディアをマスゴミと揶揄したり、偏向報道と罵ったりしていますが、いわゆるネット世論もゴシップ満載のテレビ番組も衆愚がそのまま形として表に出てきた、ある種の国民が抱えるルサンチマンの表れではないかと思うのです。
私もこの動物農場で生活をする愚かな動物の一匹に過ぎないのだなと読んでて胸が苦しくなりました。支配層が仕掛けてくるありとあらゆる権謀術数がわかりやすい言葉で書いてあります。
- 支配層の都合のいいように、わずかに変更され続けるルール
- 単純なスローガンによる思考停止
- 悪役を仕立てて、物事を単純化してみせる演出方法
- 難解な専門用語をマシンガンのように浴びせる
- 見せしめによる威圧
多くの人にとって右も左もありません。ただ、誇りを持てるような仕事とささやかな日常を送っていきたい、そう願っている人が大半ではないでしょうか。
悟り世代を中心にそういう考えが広まってきているかもしれません。
ただ、このささやかなというのが実は曲者。
「ささやかな」というものの土台が社会に関わろうとしない無関心な怠惰になった途端、雲行きがだんだんと怪しくなっていくのです。
自分が他人よりも少し優れていると考えているような人こそ、こういった支配層による道具にされやすいような気もしました。自尊心は安価で利用しやすいのです。
作中にも、人間の支配から解き放たれ、動物だけとなった農場で自発的に働く動物たち。最初は、誰しもが自分の仕事に誇りを持ち、生きがいを感じていました。
しかし、支配層が台頭するにつれて、何故か動物たちの生活は悪化の一途をたどっていきます。
芸能人の不倫話なんてどうでもいいです。それこそルサンチマンの餌じゃないでしょうか。
あなたは、その餌食べますか?
登場人物
- ナポレオン(ブタ):独裁者。モデルはヨシフ・スターリン
- スノーボール(ブタ):ナポレオンに反逆者のレッテルを貼られる
- メージャー爺(ブタ):動物農場の理想を語り、序盤で病死
- スクィーラー(ブタ):饒舌。ナポレオンの腰巾着
- ボクサー(ウマ):働き者で力持ち。他の動物たちからも尊敬される
- ベンジャミン(ロバ):インテリ。しかし無気力
- モーゼス(カラス):ユートピア神話や怪しげな都市伝説を吹聴
- 9匹の犬:ナポレオンの忠実な手下。敵対した動物を粛清
- 羊たち:考えなしにスローガンを連呼
もっと深く読むために
ヨシフ・スターリンって誰?
スターリンは本名ではありません。
スターリンという姓は「鋼鉄の人」の意。彼の本名は、ヨシフ・ヴィサリオノヴィチ・ジュガシヴィリといい、1979年にグルジアの靴色職人の子供として生まれました。
成績優秀でしたが、共産主義活動を熱心に行うようになり放校。その後、テロ、暗殺、銀行強盗、売春宿の経営など悪事の限りを尽くした男。
1924~1953年、ソ連の独裁的権力を握り、反対派を徹底的に粛清。犠牲になった数は推定700万人ともいわれています。これは現在の埼玉県の全人口に匹敵する数。
スターリンが死んでから3年後の1956年にフルシチョフ第一書記がスターリン批判を展開。この告発によって、てスターリンは偉大な国家指導者という評価から、恐るべき独裁者という評価へ変化しました。
ある政治家が独裁者であれば、次の民主的な選挙はやってきません。これを「民主主義のパラドックス」と呼ぶそうです。
一党独裁の政権下で独裁者が誕生した結果、ソ連、中国、北朝鮮がどうなったかはみなさんもご存知だと思います。
詳細はこちらの過去記事を参照してください
池上彰から学ぶ大人の教養-そうだったのか!現代史