本書は最高にスタイリッシュな仏教入門書です。
多くの仏教入門書には、ありがたい言葉(というか解釈)がたくさん載っています。
ええ、本当に。
喉が詰まるほど有り難い言葉の数々。
お釈迦様の有り難い人生訓だぁ⁈
眠たいこと言ってんじゃねー!
んなもん、仏教にあるわけねーだろっ!
失礼しました。
東洋哲学に興味をもった人間にとって、仏教哲学ほど探究心をくすぐるものはないと思います。
ただ、残念なのは日本国内の特殊な死生観や、中国を経由しで日本に伝来した仏教は本来の姿からかなり形を変えてしまったと言って差し支えないでしょう。
仏教におけるその奥義なるものは永らく謎に包まれていました。
仏教の勉強を始めると、仏教用語はクールだけど何を言ってるんだかよくわからない、念仏を唱えて気持ちよくなったり、十牛図を見てウンウン唸ったり、こじつけみたいな例え話や無限に続く禅問答(笑)。
今では、漢文経由ではなく、原始仏教の原型に近いと言われているパーリ語から直接翻訳されたものを読めるようになりました。
中村元先生ありがとうございます。
しかし、これもなかなか難解なのです。
そして、苦労しながら仏教哲学を探求する多くの人が息も絶え絶えで、龍樹に辿りつきます。
でも、これもやっぱり難解。
上記のような、長い長い時間をかけて仏教を学ぶ人間の辿る道を、一冊の本にまとめ上げる著者の力量に舌を巻きました。
本書は、葬式仏教ではなく、仏教哲学を学びたいと考える多くの人にとっての指南書となるでしょう。
そして、さらに付け加えるならば、般若心経に関する説明がピシャッとしてて素晴らしいのです。
般若心経関連の書籍は何冊か読みましたが、どれも何か府に落ちない。
もう脳みそがドロドロになってくる。
いや、仏教は時代を経るにつれて濁ってきていると感じてしまうのです。
少し前に般若心経の現代語訳がネットで人気になりましたが、あれは仏教の導入部分を語っているに留まっており、仏教哲学を学べば学ぶほどあの訳は本来の般若心経が意味するところから、かなりかけ離れていると感じます。
あれをイマイチ!と感じたあなたの感性は正しい!
肩の力を抜いて気楽に生きようぜ!ん?馬鹿かな?
原始仏教のエッセンスをしっかり踏まえ、その後に生まれる般若心経の解説までの道筋がスタイリッシュ!
飲茶先生は刃牙成分と表現されてますが、本書の特徴はスタイリッシュさにあります。
そう、今までの仏教入門書に足りなかったのは、このスタイリッシュさなんです。
仏教入門書として、これほどスタイリッシュに東洋思想を説明している本というものに私は出会ったことがありません。
そして東洋人であることのアドバンテージが明瞭に意識できます。
欧米人が何の欠乏感で日本の寺に来るのか、ジョブズがどうして瞑想を嗜んでいたのかこの本でわかるようになります。
西洋と東洋では思考のフォーマットが根本から違うのです。
仏教に多くのページを割いていますが、インド哲学、中国哲学、日本哲学などをしっかり順を追って説明してくれます。
一番最後にはあの十牛図で締め括るところとかホント、スタイリッシュ!
刃牙成分120%の本書は是非読んでみて下さい。