本書のタイトルがストレート過ぎて、面白みに欠けますが内容は素晴らしいです。
植物に興味をもったらまず手にとって欲しい一冊。
一口に植物を学ぶといっても、切り口が多岐にわたっているため最初の一歩が難しい。
道端の植え込みにある植物ですら何百種とあるので、実は興味を持つ敷居の高さというのがなかなかあるのではないかと思います。
最近はGreenSnapのような素晴らしいアプリもあるので、植物の名前を覚えるのはたやすくなったと言えます。
けれども植物への関わり方というのは本当にそれぞれで、それが、美容成分なのか、園芸なのか、植物画なのか、農業なのか、盆栽なのかなどなど、多岐にわたっていますがこれらはやはり人間側から見た植物に対する姿勢だと思えるのです。
実際のところ、植物は人間のことを考えてその楽しみを提供しているかと言われればそうではありません。
彼らには彼らなりの理由があり、美容成分や抗酸化作用、花の色や形状を工夫しているわけです。
それを人間が使わせてもらっているに過ぎません。
つまるところ、人間側から見た植物ではなく、植物側から見た外の世界という視点が首尾一貫して描かれているので、大変面白いのです。
天然成分は何故体にいいのか?
天然由来と聞くと何の疑いも持たず体に良いものだと思ってしまう節がありますが、この理由を考える人は少ない。
たとえば、植物がどういった理由で抗酸化物質であるアントシアニンやポリフェノール、各種ビタミンによる老化防止や美肌効果、抗ストレスを有しているかというのは考えてみれば不思議なこと。でもこれは植物自身がその身を守るために発達させてきたものをただ人間が借りているに過ぎないということを本書では明かしてくれます。
例として、病原菌の侵入を感知するために、病原菌が発するエリシターという物質を感知すると、植物は防御体制に入ります。
しかし、病原菌の方ではサプレッサーという物質を出して、植物の防御機能を麻痺させます。植物は活性酸素で病原菌に応酬。
これをオキシダティブバースト(酸化の大爆発)という毒ガス攻撃で戦います。
しかし、それでも植物に侵入してきた病原菌を倒すにはどうするべきか。ずばり自爆です。周辺の細胞を自爆(アポトーシス)させて病原菌もろとも死に追いやります。
戦いというのは必ず両者に傷を負わせます。
防衛した植物側にも活性酸素という毒ガスと自爆した細胞が出てしまいます。
これらを癒すために出てくるのが、抗酸化物質であるアントシアニンなどの物質です。
つまり植物たちが勝ち取った能力の恩恵を私たちは受けているんですね。
そのほかにも、植物と昆虫の関係、植物内に同居する共生菌、花の経営戦略、花の色に隠された秘密などが収録されています。是非読んでみてください。