ロシアの文豪レフ・トルストイよる作品。代表作に『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『復活』などがあります。
発表されたのは1886年。邦題タイトルにインパクトがありますよね。
どんなバカが出てくるのか楽しみして読み進めていくと、だんだんと実はバカなのは自分だったんじゃないかと思い知らされる作品です。
トルストイらしいといえばトルストイらしい話で、さっぱり言ってしまうと勧善懲悪のお話。それも中々手厳しいやつです。
あらすじ
【登場人物:4兄弟】
軍人のセミョーン
商売好きのタラース
ばかのイワン
妹のマルタ
まず、軍人セミョーンと商売好きのタラースは小悪魔たちにそそのかされます。自分の欲望の赴くまま兵隊を増やしたり、お金を増やし続けた結果、最後には酷い目に遭ってバカにしていたイワンを頼ります。
ばかのイワンはやっぱりバカですから、小悪魔の誘惑には引っ掛かりません。相変わらず妹と慎ましく暮らしています。
イワンをたぶらかすことが出来ない小悪魔たちに、しびれを切らして大悪魔が出てきてイワンをたぶらかそうとします。
大悪魔は「手で働くより、頭を使って働けば楽をして儲けることができる」とイワンとその国の人たちに演説します。けれども、誰も相手にしてくれません。大悪魔は高い櫓の上で、頭で働くことの意義を演説していましたが、とうとう力尽きて落ちてしまうというお話。
「頭を使って働けば楽をして儲ける」って、21世紀はこんな奴ばっかりですよぉ。
イワンのばかはトルストイが目指した生き方
イワンはロシアの良心といってもいいかもしれません。イワンのばかというモティーフはロシアの民話にしばしば登場するそうです。
純朴かつ愚直な男ではあるものの最後には幸運を手にすることが多い。正しく生きる者は幸せになって欲しいという願望でもありますね。
ロシアの文豪トルストイが晩年まで目指していた生き様そのものような気がします。
トルストイは、思想家という一面も持っており非暴力主義者としても知られています。トルストイ自身は裕福な家の出ですが、晩年は貧しい人々と共に家出を決行し、遂には駅長官舎にて肺炎で死去。82歳没。
彼の葬儀には1万人を超える参列者があったというから驚きです。
国内では人間のドロドロした部分を緻密に描き出すドストエフスキーの方が人気がありますが、もう少し時代が進むとトルストイの価値が再発見されるのではないかと密かに思ったりもしています。
この本にはその他の短編も収録されています。私が特に気に入ったものを挙げていきますね。
収録作品:ふたりの老人
二人の老人が聖地エルサレムに向かうお話です。一人はバリバリ仕事の出来る金持ちで、もう一人は気楽な元大工です。
元大工は、途中で死に掛けている村人に手を貸してやり、聖地エルサレムまでたどり着くことはできませんでした。一方金持ちは聖地エルサレムに無事にたどり着きます。さて、この聖地エルサレムで金持ちが見た光景とは。。。
収録作品:3人の隠者
ある偉い坊さんが船旅の途中に、3人の隠者が住む島があると聞きつけ、その3人がどのように神に仕えているかを確かめるため、島を訪れます。
そして、3人の隠者の話を聞いた坊さんは、聖書を誤って解釈していると感じ、正しい祈り方を教えます。しかし、正しい祈りを教えたつもりのお坊さんは、その後自分の態度を後悔するのです。さて、その理由とは。。。