ハンガリーの建築家、イムレマコヴェッツの木造建築教会を訪ねてきたので紹介します

Evangelikus templom(1990)

過去の写真を整理していたら、ハンガリー旅行の手記が出てきたのでこのブログで改めて紹介。私が20代前半だった当時、ハンガリーの友人を拝み倒して連れていったもらった、ハンガリーの建築家イムレマコヴェッツの木造教会群です。日本国内では一般的にあまり知られていないかな。

この投稿で紹介する全ての写真は撮影許可をいただいています。

ハンガリーの建築家 イムレ マコヴェッツ(Imre Makovecz)とは?

1935 –
建築家。
ハンガリー国立都市計画研究所設計課長。
1954〜59年ブダペスト工科大学で建築をカーロイ・ヴェイヒンゲル等に師事。’59〜62年ブダペストの都市計画研究所「ブハティ」’62〜71年農業共同組合の建築設計事務所スヨヴテルを経て、’71〜77年ハンガリー国立都市計画研究所設計課長。’77年ブダペストの森林協会で多くのプロジェクトを完成させる。彼の建築は異形と、インタージャンルな文化運動、技術の民衆化とによって、マジャール「文化革命」を遂行しようと試みている。
コトバンクより引用

Evangelikus templom(1990)

Evangelikus templom(1990)
Evangelikus templom(1990)
スイスのバーゼルから夜行バスで15時間、ハンガリーの首都Budapestに到着。首都Budapestから電車で1時間半のSiofokにて撮影。最初に訪れたのは、オレンジが鮮やかな教会。

舞い上がる様に取り付けられた二枚の木造の翼が最初に私たちを出迎えてくれました。この教会の管理者の話によると、キリストが乗る為の船をイメージして作られているそうです。

教会全体を包む流動的な曲線が二枚の翼に生命という気高さと仮面を着けたような奇妙な感じの両方を同時に引き立てていて、その建築家のバランス感覚が先進的なものであることにすぐに気付かされます。厳粛な教会という場所に散歩道に広がるような景色の身近さを織り交ぜた楽しい教会でした。

Szentlele Templom(1987~1991)

  
Szentlele Templom(1987~1991)
Szentlele Templom(1987~1991)
翌日、Budapestより車で2時間のPAKSにて撮影。
大地を泳ぐ、クジラのような力強い概観。

細身の木の柱達が、繊細なタッチで天上に伸びていました。その流れを受けて、祭壇頭上に配置された、三体の木彫りの像が物語る雰囲気は、時の節目を告げるようにも感じられます。

Szent Istvan templom(1996)

Szent Istvan templom(1996)
Szent Istvan templom(1996)
PAKSより更に車で2時間のSZAHALOMBATTAへ向かい比較的最近(96年)の作品を見てきました。住宅街のほぼ中心に建てられた、近代的な面持ちの教会でした。大きく広げた4枚の翼は、空から降って来た刻印の証のように教会正面に挑戦的にそびえ立っています。

イムレ マコヴェッツのオフィスを訪問

イムレ マコヴェッツのオフィス

旅の最終日には、建築家イムレ マコヴェッツのオフィスを直接訪ねました。世界的な建築家ですから門前払いを予想通していましたが、ハンガリーの友人が受付奮闘。中へ通してくれました。これは本当にうれしいサプライズ。今でも笑顔で対応してくれたオフィスの受付のおばちゃんにも感謝しています。彼女からは、イムレ マコヴェッツ自身がデッサンしたポストカードをいただきました。私の宝物です。

マコビッツ氏本人は不在でしたが、彼の机には描きかけの建築スケッチが無造作に置いてあり、壁にはアトランティスをイメージして描かれた人と木の生命が融合したような絵などが飾られていました。

彼の繊細なスケッチにも驚かされましたが、アイデアの源であるその部屋にはある意味で日本人的な感覚では耐えることが出来ないような、異常なまでの木という素材、生命へのこだわりが溢れ出ていました。

それと同時におとぎ話出てくるような乗り物の絵やスケッチがたくさん飾られていました。やさしく語るおとぎ話だからこそ、その裏に意図された永遠に続くはかなさが私たちに訴えかけて来るようでした。
イムレ マコヴェッツ ポストカード

現代の木造教会

ヨーロッパの教会と聞くと、石造建築ばかりを連想しますが、ヨーロッパはもともと木造建築が主流でした。さらに言うと、北欧、ロシア、東ヨーロッパなどに建造された木造教会は世界遺産にもたくさん登録されています。有名なのは、ロシアのプレオブラジェンスキー大聖堂やノルウェーのヘッダール教会とか。

ハンガリーでも『木』というのは特別な意味を持つそうです。これはおそらく北欧、ロシア、東ヨーロッパなどに建造された木造教会が土台にあるものと考えられます。

これらの伝統を力強く昇華させたこの建築家の試みに、何か胸に熱く込み上げてくるものがあります。
現代の木造教会