最近のSF映画を観て思うのは、構成の質の低下。一作で終わるようなものはどうしても詰め込み過ぎてしまうし、三部作のような大掛かりなものとなると、無駄に次回作を期待させられたりととにかく気持ち悪い待ち時間が長い。
どちらも食傷気味になってしまう。
スターウォーズなんかはとっくに賞味期限が切れている。
じゃあ海外ドラマのSF作品はどうかというとそれなりに健闘している感じはあるけれど、話数を重ねていくうちに、ストーリーが間延びしてしまい、話を出し惜しみしたり、映像にも粗が出たりする傾向がある。
一概には言えないけれど、これはNetflixで配信中のトラベラーズの第2シーズンを観て感じた。
ただ、作品によっては映画に近いクオリティを出してくることも事実。
2018年2月、SF映画や海外ドラマのデメリットを覆す怪物作品がNetflixから配信された。
作品名はオルタード・カーボン。
リチャード・モーガン原作のSF小説を映像化したもの。
これは他の海外SF作品とは次元が明らかに違う。
原作のシナリオが骨太なこともあって、海外SFドラマにありがちなストーリーの間延びは一切ない。
映像の美しさで言えば、SF映画と同等いや場面によってはそれ以上のクオリティ。
そして、映画ではなかなか描写出来ないかなり際どいところまで映像として表現している点も併せて評価したい。
暴力的で性的な部分までしっかり描くことでSFのリアリティがグッと増している。
オルタード・カーボンのあらすじ
舞台は2384年。主人公は日本と東欧の血を引くタケシ・コヴァッチが250年ぶりに眠りから醒める(未来設定でさらにその先の未来で目覚める!この設定もなんだか心をくすぐられちゃう)。
この世界では、人間の意識は完全にデジタル化され、スタックと呼ばれる六角形のメモリーに保存される。
そして、スリーブと呼ばれる肉体にセットすることができる。
つまり、お金さえあれば若々しい肉体を次々と乗り換えることが出来る未来。
さらに言えば、富裕層はこの意識のつまった意識(スタック)を衛星にアップロードしてバックアップまで用意出来る。
心も体も死ぬことのない不死が実現した未来。
肉体が壊れれば次の肉体(スリーブ)にこの意識(スタック)を差し込めばいいだけなのだから。
ここで面白いのが、この肉体を乗り換えるという行為に反対する宗派や、乗り換える肉体(スリーブ)が買えない貧困層などがどういった生活を強いられるかをディストピアとして詳細に描きだしている点。
原作者リチャード・モーガンとは?
原作者リチャード・モーガンはケンブリッジ大学卒。大学で歴史を学んでいたこともあり、この経験はSF作品のシナリオの骨太さに大いに貢献していると考えられる。日本では一部のSFファンにしか知られていないが、ディストピアのSF作品を得意とするアメリカの作家。海外ではかなりの人気。Amazonレビュー数の日米の差をみればその辺を感じ取れるかもしれない。
2002年処女作『オルタード・カーボン』を出版。
オルタード・カーボンは、全10話。1話あたりの長さが約50分。全部で8時間以上もある超大作であるものの、まったく視聴者を飽きさせないストーリー、映像美、おすすめです。私は1日で全て観てしまった。
海外ドラマは映画の下位だと感じる人がまだ大半だと思う。けれども、近い将来この地位は逆転するかもしれない。そんな可能性を感じさせてくれるのが、Netflixのオルタード・カーボン。
アンチヒーローであるタケシ・コヴァッチを主人公とするシリーズは全部で3部構成。いずれも、タケシ・コヴァッチが主人公。