遊びきれない数のスマホゲーム、ぎっしり埋まるTwitterのTL、連日炎上するネット世界、機能的な家電。FacebookやInstagramは毎日が誰かの記念日。
極彩色の日常生活。
けれども、これは人間が彩った社会の「色」に過ぎません。
多くの現代人にとって、自然とは人生の傍を通り過ぎる退屈な風景に過ぎません。
もし、自然に興味が湧いたとしても目を楽しませてくれる桜や、神社仏閣にあるような大樹、紅葉の名所を巡るくらいが関の山でしょう。
素朴なものを能動的に理解しようとする姿勢を人間の一員として持っておきたなという欲求のもと、この本を手に取りました。
樹木ハカセになろうでは、自然、それも特に樹木という不思議な存在がどれほど魅力的かを専門的な話も交えながら、わかりやすく解説してくれます。
いくつか抜粋してご紹介しましょう。
巻頭には巨木の写真や樹木医の作業風景を撮影したもの、切られた枝がどのように樹皮に包み込まれ修復されるのかがよくわかります。
日本一の巨樹は、樹齢1500年の鹿児島県蒲生八幡神社の大クスだそうです。
その幹周囲はなんと24.2m。
冒頭に美しい写真が掲載されており、全国の巨樹巡りをいつか敢行したいなと思いました。
昔は木の製品が豊富でした。
ですから、まず生活の役に立つ木に名前がつくようになったそうです。
面白いですね。次に樹種でわざわざ区別する必要のない木は燃料の「薪(たきぎ)」として使います。
燃料用の木はひとくくりに「柴木(しばき)」と呼ばれていました。
ですから、昔話のおじいさんが「しばかりに行く」のは、燃料となる薪を拾いに行くということなのです。
これは勉強になりましたね!
また、名前のわからない珍しい木などは「ナンジャモンジャ」と呼ぶこともあったそうです。
この辺りのネーミングセンスは現代の日本人にも通じるものがあります。
また巨木として有名なのが屋久島の縄文杉ですが、これは1966年には発見されたそうです。
比較的最近なんですね。観光のため、周囲にあった木々を伐採したため木が弱ってしまいました。
さらに、木を保護する名目で根の周りに小石を置くという運動もありましたが、却って根を痛めつける結果となりました。
また、お守りとして樹皮を剥がす人が後を絶たないので、幹もボロボロになります。
現在は、小石を撤去し、土壌改良を加え、人を寄せ付けないお立ち台を設置してしっかり保護されています。
本で巨樹巡りした方はこちらもオススメです。