満員電車の中で君は自分をオンリーワンだと思うかい? 会社に並ぶデスクのひとつに座る君を社長はオンリーワンだよ君は!と声をかけてくれるかい?教室でクラス中から君こそオンリーワンだともてはやされるかい?
ないよね。そう、ほとんどそんな機会は人生には無いんだ。もちろん家族や親友にとっては君はオンリーワンなんだけどね。だけど、渋谷のスクランブル交差点を渡る君はオンリーワンじゃなくて有象無象の風景に過ぎない。君だって相手をそう思うだろう?みんなオンリーワンに飢えてるから、あの歌のあの言葉が流行ったんだと思う。
はっきり言うと、君は家族や友人からのオンリーワンだけじゃ満足出来ないんだ。実は社会からオンリーワンと言って欲しいんだ。
例えば、頭の黄色いタンポポが10センチ間隔で2本並んでいたとする。もし、彼女たちが口々にオンリーワンと口ずさんでいたら、君はどういう気持ちになる? 私は少し悲しくなるかもしれない。個性を認めようという気持ちは私にもあるけれど、並んだ黄色いタンポポたちが、オンリーワンだよ私たち!と聞くと、「そうだね、君はオンリーワンだよ、あと君もね」とやらなきゃいけなくなる。でも腹の底ではそれを否定する気持ちがどこかにある。そういう自分のイヤな気持ちに気付いてしまう。だからオンリーワンだなんて聞きたくない。
ここからが本題。君はオンリーワンじゃなくてナンバーワン。オンリーワンなんて言葉に飢える必要なんてない。社会に出れば、君は何色かの服を着せられる。そこで、オンリーワン!オンリーワン!なんて叫ぶのはやめたらいい。ただ、自分がナンバーワンという感じ方が本当かどうかを真剣に自分自身に聞いてもらいたい。
自分がナンバーワンだから、くすんだ色の服をあえて着るんじゃないの?自分がナンバーワンだから、不味い青汁を飲むんじゃないの?自分がナンバーワンだから、相手のナンバーワンも尊重するじゃないのかな。
頭の黄色いタンポポが10センチ間隔で2本並んでいたとする。もし、彼女たちが口々にナンバーワンと歌っているなら、最初は滑稽に思うかもしれない。けれども、誰かと比べることを止めて、たった一人残った自分をナンバーワンだと言っているとしたら、私はその言葉に心の底から驚くに違いない。