人にモノを教えるというのは、とても難しいことです。特にそれが仕事となれば、安易にミスをさせるわけにもいきませんので、仕事を教えることに躊躇してしまいがちです。
全部自分でやってしまった方が、内容を完全に把握できるし、安心できます。けれども、会社の中で立場が上がっていくにつれて、現場から管理へとその役割が移っていった時に、やはり現場の仕事は誰かに引き継がなければなりません。組織とはそういうものです。
新卒に対して、仕事を教えるというのはそれほど難しいことではありません。簡単な所から始めて、徐々に難しい内容へと移行していきながら、仕事を覚えてもらえばいいのです。研修制度もあるでしょうし、多少時間をかけても許されます。
ただ、今日日の日本の会社でそれが通用するかというと、少々事情が異なるようにも思ったりします。人材不足にあえぐ企業は「即戦力獲得」を掲げ、中途採用を積極的に行っているという話をよく聞きます。
有効求人倍率は2010年から右肩上がりです。2014年度の有効求人倍率は、1.66倍で、過去23年間でも最高の水準です。私の知り合いでも、30歳を過ぎて転職活動をしている人を何人か知っていますが、中途採用を積極的に行っている企業は多いとのことでした。(非正規労働者の比率も上がってきていますので、有効求人倍率が上昇する一方で労働者の立場が弱くなっていることは間違いありません)
即戦力は存在しない
現実的に即戦力という人は存在しません。即戦力になりそうな人というのは存在します。それぞれの組織にはそれぞれの仕事の進め方というのがありますから。
この中途採用された人をいかに現場で即戦力にするかが大きな課題として浮上してきているように思うのです。新卒と同じやり方ではいけません。
自分のミスを告白しながら連帯感を強めていく
私も人にモノを教えるという経験が豊富というわけではありません。中途採用の人をどう指導していくべきかを考えた挙句、思いついたのが自分のミスログを振り返りながら仕事のやり方を説明していくという手法です。
私は、過去の自分のミスを全てMicrosoftのOneNoteに記録しています(笑) 即戦力になりそうな人というのは、やはり同業種での業務経験がある人です。ですので、その分野でどこに問題が起きやすいかという嗅覚は持っているわけです。新しい職場で、その嗅覚に反応させてあげれば、少ないストレスで仕事を覚えてもらえるのではないかとも思うのです。
仕事の流れを説明する時に、私はその仕事で過去に起こしてしまった失敗を一緒に話します。その結果、現在の仕様に改善されている、またはテスト項目にこれが追加されているといった言葉を付け加えながら説明をしていきます。
そう付け加えることで、新しく現場に入ってくる人との連帯感を強めていくように心がけています。自分の弱さを人に見せるというのは、いい気持ちがしないかもしれませんが、裏を返せばこれは腹を割って仕事を伝えるという手法でもあるのです。
ミスログを記録するように提案
私の仕事を引き継いてくれる人にはミスログを付けるように教えています。一見問題にならないような小さな失敗でもいいんです。それを記録してもらうことで、自分の弱点の傾向を客観的に把握してもらうのです。そうすることで大きな事故を未然に防ぐように、個人個人で意識的に努力してもらえたらなぁと思ったりしています。