【TED】アブハ・デウェザール: 「デジタルの今」を生きる

【TED】アブハ・デウェザール: 「デジタルの今」を生きる


話は2012年10月に発生したハリケーン・サンディから始まります。ニューヨークでは、広範囲な浸水が原因と考えられる停電が多発し、ニュージャージー州では安全のため原子力発電所が稼働停止しました。今回のプレゼンターである彼女は、当時ニューヨークにおり実際に被災しています。

彼女は食事やシャワーや諸々のライフラインを確保する苦労のなかで、もう一つ重要なことがあったと述べています。それは彼女が所有する携帯電話やノートパソコンや複数のガジェットを「充電すること」だったそうです。そのために、パン屋のベンチ下やお菓子屋の入り口下にコンセントを探したそうです。そういった行動をとったのは彼女だけではありません。被災して停電に見舞われた多くの人が実際に「電気に飢えていた」そうです。

そうした行動を突き動かす衝動の本源は、その先にある「デジタルの今」に繋がりたいという抗い難い欲求ではないのでしょうか。

さて、話は人間が持つ2つの時間軸の話に移ります。ひとつは「寿命」、もうひとつは「今」です。彼女はインターネットの発達によって私たちの「今」が縮んでいると主張します。もちろん多くの物理的距離が解消されて生活は本当に快適になりました。しかし、その距離が縮み過ぎることで、私たちの今が削られつつあると彼女は主張します。

TwitterやFacebookは常に私たちの現在を少しだけ先取りして選択を迫ります。私たちはいいね!を押したり、リツィートするかを悩んだりして「今」を消費していきます。小さなモニターに映し出される内容が現実であると思い込むようになっています。

なかなか面白かったのは、「時間は保存できない」という彼女の主張。言われてみれば当たり前のことだけれど、ついさっきまで「時間」も保存できると錯覚していた自分がいませんか? 動画でも写真でも文章でも、個人が生み出すものなら全て保存出来る時代になりました。少し先の未来はソーシャルやブログやニュースがあなたの好みを先取りして伝えてくれます。未来と過去が「今」を圧迫しつつある。それが「デジタルの今」だそうです。

僕は電気人間

さて、この話は日本人に強く響きます。私たちは2011年3月11日(金)に起きた東日本大震災を知っています。そして実際に多くの人が「電気に飢えました」。動画を実際に見て、輪番停電を思い出した方もいるでしょう。正確に言えば、私たちは今でも電気に飢えています。

彼女の話を土台にもう少し話を進めてみましょう。電気を使うのは何も電化製品ばかりではありません。私たちの身の回りにあるものはその大半が電気で機械を駆動させて作られています。僕の着る服、履いているスニーカー、加工食品、家にある家具、読んでいる文庫本、花粉症用のマスクも「電気」というエネルギーで作られています。

私たちは携帯電話やノートパソコンや家電製品などの日々消費する電気を気にしがちですが、既に電気を使って作られた「モノ」に対してもう少し敏感にならないといけないような気がします。なんといっても私たちは全身電気で出来ているんですから。

ITはもつれた糸

私は新米WebディレクターとしてIT(今はICTと言ったほうがいいのかな)に食べさせてもらっています。電気に食べさせてもらっています。しかし、どこまでいってもITはもつれた糸です。その時々で最高のパフォーマンスを出すように努力はしていますが、その努力が数年もすると古くさいものになる。これがITの進歩の素晴らしいところでもあり、恐ろしいところでもあります。

ITは凄まじい速度でどこまでも進んでいくものですから、一部の天才を除いてその糸を完全に解きほぐす時間がないのです。これは技術面の進歩だけではなく、サービスを受ける側としても感じるのですが、モニターから常に情報が溢れ出てくるので、やはり私たちの考えは常にもつれます。しかし多くの人はそれを見ずにはいられません。

電車内では多くの人の鼻の頭には白い電子の反射光が灯っています。もちろん、今電車内でこのブログを読まれている方もいるでしょうが。。。

○○御用達の学者様

さて、もう一歩だけ話を進めましょう。インターネットの世界では、事の真偽は必ずソース元を出せと言われます。しかしながら、原発問題のように大きな問題はどこまで言っても最後に辿り着くのは難解な言葉が羅列された一般の私たちに理解しがたい説明文です。または、感情に任せた乱暴な意見だったりします。学者が言った、活動家が言った、その人たちはそれぞれの正義をぶつけ合って生きているのです。メシの種というのもあるのでしょう。

東日本大震災で僕がはっきりとわかったのは、「立ち位置」の違いで如何様にも言えるということ。それは人間である学者や研究者も同じです。私たち一般人は私たちが信じたいと思うベクトルの意見に引き寄せられます。果たしてそれがどういう結果を招くのか、それは長い時間をかけて私たち全員が引き受けなければならないことでもあります。

ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
私が取りうる立場は下記URLにあります。

うさぎ!第24話(原発について)