当時は「わいせつ」と評された力みなぎる詩集。ウォルター・ホイットマンの『草の葉』

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正直、退屈しそうなタイトル。しかも、翻訳された詩を読んで幻滅した経験を持つ自分には、もともと読んでみようと思っていなかったというのが本音でした。

ただ、あまりにも良書として上がってくるタイトルなので、ここはひとつがっちり組み合ってみようかなという感じでぼちぼち読み始めることにしました。内容は分離戦争の頃のアメリカを中心に短い詩が延々と続きます。

著者について

ウォルター・ホイットマン (Walter Whitman, 1819年5月31日 – 1892年3月26日) はアメリカ合衆国の詩人。アメリカ文学において最も影響力の大きい作家の一人でもあり、しばしば「自由詩の父」と呼ばれる。

発表当時の作品に対する評価は大きく割れ、特にその代表作の詩集『草の葉(en:Leaves of Grass)』は性的表現があからさまなところから「わいせつ」と評された。

ホイットマン自身の言によれば、何年ものあいだ「普通の報酬」のために働いた後、ついに詩人になることを決意。詩集『草の葉』の原型となる作品は、すでに1850年に着手しており、生涯、手を加えつづけることとなる。

1855年に自費出版されたホイットマンの代表作『草の葉』は、アメリカの叙事詩を市井の人々に届けようという試みであった。 ホイットマンは1892年の死まで、この作品の拡充、改訂を重ねた。

それぞれの版には、時代の風潮や作者の思想の変化が反映されている。初版の巻頭詩「ぼく自身の歌」が最も広く知られている。
Wikipediaより




読み終えて

上巻を読み終えて最初に感じたのは、大きな船の中で船酔いしたような気分でした。酩酊状態になる。とにかく、気持ち悪い。でも、この気持ち悪さというのは女子達が叫ぶあの生理的な気持ち悪さとは違うようでした。もちろん、自分は女子ではないんですが。

今の自分には理解出来ない何かが潜んでいるから、気持ち悪いんじゃないかと。そう思い立って、2冊目の中巻へと入っていきます。ここで詩人ホイットマンの表現を受け入れ始める自分がいます。

中巻になって言葉が輝き始めたのか、それとも自分の新しい感覚が開いたのかはわかりません。とにかく、延々と続く詩の抑揚をよく噛み締めながら読めるようになってくるから、不思議な作品だと思いました。スルメ本ですね。

下巻になると、今度はこの詩群に眩しさすら覚えるようになってきます。音楽のボレロという作品を聴いているような心持ち。似たような旋律の言葉を繰り返し折り重ね続けながら成長する詩群の力強さといったら!

読み始めた当初は大量の詩流し込んで読者を呑み込む強引な手法かと思いきや、全くその正反対で遠くでただ何かに向かって語りかけるような言葉が延々と続きます。

最初は戯言と決めつけていたものが、読み進めるうちに妙な価値観を帯びて自分の中にある何かに音叉(おんさ)を鳴らしたように響いてきます。

味わったことのない共鳴。理想を論じるやり方は聖書をはじめ、多種多様あるかもしれないけれど、これはホイットマンにしか成し得ない業かもしれないです。大量の詩というのログが、読み手に雪のように舞い降り積もっていきます。個々の詩がたった1色の絵の具で見事なグラデーションを見せてくれる、そんな作品。

新しい価値観を受け手側に提供してくれるのがアーティストの仕事であるのならば、間違いなく彼はそれを独自の手法で切り拓いていると言えるでしょう。善でも悪でもない。轟くように進んでいく地球という惑星をアメリカ大陸から礼讃する彼の視点には特別の価値があるといえます。

これは上中下全てを読んでおいたほうがいい作品。そうでなければ、草の葉でもっとも有名な詩、僕自身の歌は理解出来ない。上巻だけを読んでしまっては、ホイットマンの弟ジョージ同様に読むに値しないと感じてしまうかもしれないです。




ぼく自身の歌

ぼくはぼく自身をたたえ、ぼく自身をうたう、
ぼくのこの企てをやがて必ず君も企てることになる、
ぼくに属する原子のひとつひとつが君にもそっくり属しているからだ。

ぼくは悠然とさまよいぼくの魂を招く、
ぼくはゆったりと寄りかかり、あるいはぶらつき、鋭く尖った真夏の穂先をつくづくと眺める。

ぼくの舌、ぼくの血液のあらゆる原子も、この土から、この空気から作られ、
ぼくをこうして産んでくれた両親も同様に両親から生まれ、その両親にもまた両親があり、
いま完璧な健康をそなえた37歳のぼくは、
息絶える日まで続けと願いつつ、いよいよ第一歩をここに踏み出す。

あまたの宗旨や学派には当分目をつぶり、
今のままの姿に満足してしばらくは身をひくが、
さりとて忘れてしまったりは決してしないで、
良くも悪くもぼくは港に帰来して、そしてぜひとも許してやる、
「自然」が拘束をうけず本来の活力のままに語ることを。

草の葉 上巻P.97より

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“おやゆび文鳥”

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