胸をえぐる感動。マイケル・ケインの『グランドフィナーレ』

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胸をえぐる感動。マイケルケインの『グランドフィナーレ』

監督・脚本パオロ・ソレンティーノ。

舞台はスイスの高級ホテル。ここに様々なセレブたちが集う。

主人公はマイケルケイン演じる世界的音楽家のバリンジャー。

彼の作曲した不朽の名曲シンプルソングを英国女王から指揮して欲しいと依頼されるが、それを断り続ける。

果たしてその理由とは?

胸をえぐる感動なんて、変な表現ですよね。

でも、一言でグランドフィナーレの感想を述べよと言われれば、これ以外の言葉が見つかりません。

原題はYOUTHです。若さという意味。原題を知らないと、本作で描画されるYOUTHが何なのかわからなくなりますから。

いい作品です。

当初は、予告で映像美を謳っていたので、ロクな映画じゃないかもなと思っていましたが、そんなことはどうでもよくなります。

フレッド(マイケルケイン)と相棒ミック(ハーヴェイ・カイテル)が出てきて、どうやって脚本のバランスとるのか、この2人に媚びて終わるんじゃないかとの心配もありましたが、杞憂でした。

前半は繊細な色合いを紡ぐ柔らかさがありながら、後半はそれらをズタズタ引き裂くアクロバティックさがあります。

傑作です。このグランドフィナーレは。

少し難を言えば、子供が悟り過ぎている台詞回しが多いくらいです。

物語の進行スピードを補うために仕方のないことかもしれませんが、もっと練っても良かったのでは、と思います。

子供は確かに賢い存在ですが、大人のような賢さとは違うのです。

最後に流れるシンプルソングは劇場で鑑賞することをお勧めします。

胸をえぐられるシーンがいくつも出てきます。

それはグロテスクな描写ではなく、人が普段口に出さない本当の音色のぶつかり合いです。

老いという土俵の上で語られる言葉の応酬は恐ろしいもの。老人にとって若さは永遠に返ってきません。永遠に。

老いとは何か?

私たちの生活の中で、水面下で日々諦めて沈めていった出来事たちが時間の経過とともに人生の最後に浮き上がってくるのです。

追いやったものが跳ね返ってくるのです。

老いは浮力を得て、水面上に浮かんでくるのです。

沈めてきた出来事と一緒に。

人は生き続ける限り、必ず老い続けるのです。

生とは老いと向き合うこと、そのものなのかもしれません。

死は瞬間的に発生するものですが、そこに本人は不在です。

それは合図過ぎません。

老いは実在するリアル。

あなたの影ぼうしであり、生き様そのものの。

安易な大団円ではない、グランドフィナーレを是非鑑賞して欲しいと思います。

僕はもう一回観ますよ。

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“おやゆび文鳥”

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