[書評]古代インド 中村元 バーフバリのハチャメチャ感は古代インドから来ている!

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[書評]古代インド 中村元



インドってどんな国?

巷ではインド映画(ボリウッド映画)のバーフバリが話題となっているようで、ポジティブな部分やネガティブな部分も引っくるめてインドという国の情報を見聞きする機会が増えてきたように思います。


この映画でも戦象のCGが出てきますが、古代インドにおいて戦争で象は強力な兵器でもありました。

インドは南アジアに位置する国。首都はニューデリー。1947年にイギリスから独立。

日本では日本憲法が施行された年にあたります。国土面積は約328.7万km²で世界第7位の広さで日本の8.7倍。人口はなんと13億人で中国に次いで2位。

自動車生産の伸びが著しく、またIT産業でもその存在感を日増しに強めています。

宇宙開発においては、2013年11月5日、最初の火星探査機の打ち上げに成功。

教育の分野では、数学の教育に力を入れていることは有名で、19×19まで暗記をするそうです。

また0の概念を初めて受け入れた(ゼロの存在自体はギリシャ時代に知られていた)のもインド人です。

私たちが普段使っているアラビヤ数字もインド人が開発したものです。またヨガは多くの日本人女性に受け入れられています。

さて、そんなインドではありますが、私たちからするとまだまだ得体の知れない国という印象が拭えないように思います。

その一つに、未だ農村部を中心にカースト制が根強い地域(カーストによる差別の禁止は1950年インド憲法に明記)があったり、最近では性犯罪に関する内容がクローズアップされることも増えてきました。

またインドには30もの異なる言語があり、日本から見たインドというのは相当異質な国として眼に映るのは仕方のないことかもしれません。
インド地図

宗教と国家

池上彰氏はある著書の中で、海外では入国する際に、信仰する宗教を問われることが多いと書いていました。池上氏は特定の宗派に属しているわけではないですが、自身の生活習慣を振り返って「仏教徒」と書くそうです。

宗教観というのは、どちらかというと日本の方がかなり異質で、多くの日本人が自分は無宗教であると自覚しています。

しかし、これが海外に出ると事情がかなり異なってきて、宗教と国家というのは渾然一体、切っても切れない関係にあります。インドという国もそのひとつ。
インドの宗教 割合
インドにおいては、ヒンドゥー教が信仰されていて、国民の79.8%ヒンドゥー教徒です。

その他に、イスラーム教徒14.2%、キリスト教2.3%、シク教徒1.7%(一神教でカーストを否定)、仏教0.7%、ジャイナ教0.4%(ミニマリストの元祖)、などがあります。

インドは仏教の生まれた国であったはずなのに、たったの0.7%。キリスト教にすら負けているというのが驚きです。

さて、多くの宗教をかかえるインドにおいて、やはり無視できないのが、ここには出てこないバラモン教という宗教。手塚治の『ブッダ』を読んだことがある人ならなんとなく親しみを感じるのではないでしょうか。このバラモン教がインドという国の根っこにあるとも言えそうです。儀礼を中心としたカースト制を生み出した宗教でもあります。

また、著者の中村 元氏は原始仏教の研究者でもあることから、初期仏教成立から大乗仏教と上座部仏教がいかに分離して、その勢力が衰えていったかを解説しています。

バラモン教が生んだインド六派哲学

そもそもバラモン教という呼び名自体が、近代のイギリス人がバラモン中心の宗教を呼ぶために作った造語。古代ヒンドゥー教との解釈も可能。

サーンキヤ学派

世界ならびに人間存在の根本に精神と物質と2つの原理を想定。その両者から現象世界の多様性が展開されていると説く。開祖はカピラ(紀元前350年-紀元前250年頃) 現物が残っている最古の原典は、イーシヴァラクリシュナ。

ヨーガ学派

ホットヨガでもお馴染み。ヨーガとは結びつけるが元々の意味。散乱する心を統一し、安定させて静めて、煩悩や迷いを無くす。起源はインダス文明から。根本経典は後に『ヨーガ・スートラ』としてまとめられた。

ヴァイシェーシカ学派

自然哲学。開祖はカナーダ。根本原典は『ヴァイシェーシカ・スートラ』
この学派では実態、性質、運動、普遍、特殊、ない属という6つの原理を想定し、それらを区分している。徹底した合理主義の立場を貫き、聖典を知識の根拠として認めない。

ミーマーンサー学派

祭祀のの実行意義を研究して統一的解釈を与える学派。根本原典は『ミーマーンサー・スートラ』。

ヴェーダーンタ学派

奥義書であるウパニシャッドに述べられている諸哲学説を統一的に解釈。世界の根本原理として唯一なるブラウマンを想定。宇宙原理との一体化を説く神秘主義。根本原典は『ブラフマ・スートラ』

ニヤーヤ学派

論理学。開祖はガウタマ。この学派の根本原典は『ニヤーヤ・スートラ』

カースト制度について

カースト(Caste)という呼び方は本来は英語、ポルトガル語に由来するもので、インドではヴァルナとジャーティと呼びます。ちなみに、日本人などの外国人はカーストにすら含まれないアウトカーストで不可触民という扱いになります。カースト制の上での話ですが。

本書によるとカースト制の強化はグプタ王朝で特に顕著になったとのこと。カーストの種類は幾多の低位カーストに細分化され、現在では4000種あるとも言われています。これを推し進めた宗教がヒンドゥー教であり、権力側もこれを大いに利用し、諸国の国王に国教として採用。これに立ち向かったのが、仏教とジャイナ教であり、それ故に力を削がれ、かつて初期仏教において唱えられた理想は消滅してしまいました。

インド歴代の王様

インド歴代の王様を紹介しています。手厚く仏教を保護したアショーカ王、ギリシャ人王のメナンドロス王、仏教が中国に広まるきっかけを作ったカニシカ王などなど。

特にカーストが根強く残るインドにおいて、仏教をはじめとするすべての宗教を保護したアショーカ王のくだりは興味深いです。その証拠にインドの国章や紙幣には「アショーカ王の獅子柱頭」を採用されています。
アショーカ王の獅子柱頭

インドは面白い!

現代インドから古代インドへ辿っていくには、とてもわかりやすい一冊。多層的なインドという国を一枚一枚丁寧にめくってくれる様はさすが学者さん。話はインダス文明から始まり、バラモン教やヒンドゥー教の成立、歴代の王についてのあらまし。

南アジアの大陸では、さまざまな価値観が入り乱れ、多くの宗教が入れ替わり立ち替わり登場し、さらには古代インドにおいて貨幣経済の発展を背景に、唯物論者まで出てくる始末。こうして見ていくと、権力、宗教、拝金主義、唯物論の登場など、人間のサイクルを古代において一度終えているのがインドと言えるかもしれないですね。こんなに面白い歴史の本はないといえます。








“おやゆび文鳥”

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