ミヒャエル・エンデのモモ。時間貯蓄銀行と聞くと、ライフハックを思い出す。

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ミヒャエル・エンデ

大人子供問わずに気軽に読める素敵で配慮の行き届いた思いやりに溢れた作品です。痛烈な社会批判を展開しながらも、物語全体はしっかりとした幻想的な童話形式です。ガリバー旅行記の作者であるスウィフトと同じ手法でしょうか。

あらすじ

イタリア・ローマを思わせるとある街に現れた「時間貯蓄銀行」と称する灰色の男たちによって人々から時間が盗まれてしまい、皆の心から余裕が消えてしまう。しかし貧しくとも友人の話に耳を傾け、その人自身をとりもどさせてくれる不思議な力を持つ少女モモが、冒険のなかで奪われた時間を取り戻すというストーリー。
Wikipediaより

話に耳を傾けるだけの主人公

物語の冒頭での描写で、モモの不思議な能力について触れられています。それは相手の話にじっと耳を傾けるという力です。

以前このブログで紹介したヘルマン・ヘッセのガラス玉演戯の中でも懺悔する人に対してじっと耳を傾けるだけの聖者の話が出てきます。どちらにも共通しているのは、話を聞いてもらう側が自分の罪や悩みを聴いてもらううちに次第に元気を取り戻し力強くなっていくという点です。

エンデもヘッセもこの聴く力に特別の重きというかファンタジーを付与しているところが大変興味深いです。

ゆっくり進むほど速く進む

謎掛けのようにも聞こえますが、物語の中ではゆっくりゆっくり進まないと辿り着けない「時間の国」という場所が出てきます。そして、その場所へ案内してくれるのもカシオペアという名の大きな亀です。浦島太郎の話を知っている私たちなら、この亀に特別の感情を抱かずにはいられません。

ゆっくり進むほど速く進む、素敵な考え方だと思いませんか。熟成されたものはこういったものからしか生まれてきません。

効率というナイフをのど元に突きつけられた哀れな大人たちの描写には、さすがに苦笑いもできませんでした。私たちはすっかりこの時間泥棒に時間を盗まれてしまっているように思います。特にこの日本という国は、世界で一番時間泥棒が多いかもしれません。勉強にせよ、遊びにせよ、なんだか小さく小刻みに急かされているような気がして、いつも落ち着きません。

あなたの時間

成功者が語る時間の使い方、会社での時間の使い方、塾の先生が語る時間の使い方、ネットで語られる時間の使い方、時刻表に刻まれた分刻みのダイヤ、スマホの時計が刻む時間、これらは全て彼らの時間の尺度です。あなたの時間の尺度ではありません。

生活をしていく上で、その時間の尺度に入り込むことはありますが、あなたの時間の尺度ではありません。それは洋服と一緒で脱いだり洗濯したり出来るものだと私は思っています。私の時間の尺度はわたしの人生とともにあります。

この物語を読み終えることで、モモが灰色の時間どろぼうから私たちに時間を返してくれたんだと感じられます。ファンタジーが現実世界に力を及ぼす魔法の一冊。
モモ (岩波少年文庫(127))
モモ (岩波少年文庫(127))








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